2900万円の債務について、保有資産の清算価値を基準に1000万円に減縮した事例
ご相談前 | ご相談後 | |
借金総額2900万円→ | 1000万円 | |
50代男性 | 毎月の返済額35万円超→ | 17万円 |
ご依頼の背景
借金総額 | 2900万円 |
借金の理由 | 事業資金の保証債務 |
借入先 | 銀行等 |
債務者は、自動車販売等を事業の目的とする会社の代表者であったが、売上と利益率の双方の減少のために、事業継続の目処が立たない状況となったため、会社については破産手続きをとり、他方で、会社の保証債務を負担している債務者個人については、所有している住宅を残すために、個人再生手続きを希望され、弁護士に依頼した。
弁護士の見通し
代表者を務める会社については破産手続きをとり、会社の債務について、個人保証をしている保証債務については、個人再生手続きを取るというのは、珍しいケースではあるが、住宅を残したい動機で、住宅ローンの残っている部分については、住宅ローン特約を利用して個人再生手続きを希望されるのは、動機としてもっともなところであり、再生手続きの進行上、特段、障害となるような事情もなかった。もっとも、返済の予定額については、住宅ローンの残高と住宅の価値を比較した場合の余剰価値が、大きく、また、他にも不動産の資産があったため、返済予定額は、大きくなるため、履行の可能性があることを裁判所に明確にする必要があった。
サポートの流れ
返済予定額は、債権額を基準とした最低弁済額によるのではなく、所有する不動産の資産価値を基準とすることになった。そのため、居住するマンションの査定を準備したほか、居住するマンション以外にも保有する不動産についても、別途、不動産業者に評価額の見積もりを作成してもらい、これに基づいて、清算価値を算出した。その他にも、山奥の不動産で、不動産業者による見積もりの作成が困難な、物件もあったため、これについては、評価額の見積書の取得が困難な事情を上申し、固定資産税評価額を基準に、資産価値を算出することとした。
その結果、債務者の資産の清算価値は、約1000万円となり、再生計画に基づく返済予定額は、5年の分割で設定しても16万6700円が月額の支払額となる状況であった。債務者は、自営業の廃業後は、運送会社に正社員として勤務し、また、妻のパート収入があるほか、同居する成人の子供の給与も家計が同一となるため、家計全体の収入としては、40万円以上の収入があり、他方で、支出としては、住宅ローンやマンション管理費を含む住居費は6万5000円程度にとどまり、一般的な3人家族の食費や、水道光熱費や携帯電話代等の支出を前提にしても、毎月の繰越額は20万円以上になるため、家計収支表上は、弁済余力があることが認められた。また、再生積立金として、毎月16万7000円を弁護士の預かり口座に振り込んでいただくようお願いし、これについても、再生計画の認可まで、積立金の支払いを継続していただき、裁判所に、再生計画に基づく返済が履行可能であることを示すことができた。
本件では、債務者が、代表者を務める会社を破産で廃業した後に、速やかに、運転手として、正社員の職を得ることに成功しており、同居する家族の返済に対する協力も得られる状況であったため、毎月の返済額が高額であるにもかかわらず、履行可能性があることを裁判所に示すことができたものである。
不動産以外の預貯金の資産については、全額自由財産に準じる扱いとしていただき、清算価値には含めない扱いとなったため、最低弁済額の基準となる清算価値の算出のもととなった資産は、上記不動産の評価額のみとなったものである。
結果
以上のサポートの結果、清算価値を基準とする最低弁済額を前提とした再生計画が、裁判所により認可されるにいたった。